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熊谷市文化財日記アネックス

歴史 地域

秩父神社漆装飾の補修  

秩父市内に鎮座する秩父神社本殿は、その見事な彫刻と漆による極彩色の装飾により字埼玉県内でも優れた寺社建築のひとつとして知られ、埼玉県指定文化財にもなっています。古くは知々夫国造が置かれ胸刺国造とは別に置かれていた古代の國とされ、三峯神社と共にヤマトタケルノミコトも来訪したとの伝承を持っています。本殿を取り囲む壁面の大羽目目彫刻には左甚五郎作と伝わる霊獣や三猿などの彫刻が配置されていますが、繋ぎ龍のある東面では漆装飾の補修作業が行われていました。

妻沼聖天山本殿彫刻の補修にもかかわったおなじみの会社が施工していました。特別な技術を持つこの会社は日本全国を巡り文化財の保存作業を行っています。文化財はそれ自体が貴重なものですが、これを守り伝えた先人、熟練の技術者、援助する市民等の想いもまた貴重なものと思います。補修作業は数年後か数十年後にまたやってきます。現在の私たちは未来の私たちに、どう伝えていくのかを考える機会となった参拝でした。

■熊谷の彫刻師 飯田清八

春の訪れと共に秩父札所34か所を巡る巡礼者の姿を観る機会が増えてくるようで、耕地を歩み、秩父札所3番の岩本山常泉寺へ向かう一団の姿がありました。この常泉寺の観音堂は小堂ですが細部まで作りこまれた彫刻が見事です。明治時代に神仏分離政策のもと、秩父神社から移転したとされます。江戸時代までは多くの神社にも薬師堂などの仏堂が造られており、当時の秩父札所巡礼者は秩父神社や三峯神社への参詣も順路のうちでした。

この観音堂の向拝から海老虹梁の彫刻は迫力のある龍、獅子、象などの霊獣が巡らされています。作者は飯田和泉とされ、飯田は熊谷市河原明戸出身の彫刻師です。熊谷市内には近代までに多くの名工が現れていますが、飯田家は代々飯田和泉守と名乗った宮大工です。各地の寺社に手がけた彫刻が残されていますので、参詣の際には見比べてみてください。

■オオカミの御山 三峯

秩父地方に伝わる伝説ではヤマトタケルノミコトの東国への進路は知々夫国に入り、オオカミの案内を受け険路に迷うことはなかったとされます。これを機縁に三峯に東国鎮護の社として三峯神社が造られ、オオカミは神の使いとして現在までも信仰の対象とされています。整備された参道により容易に参拝することができますが、かつての参道は難路だったようです。この三峯山内には本殿建築のほか多くの建築物があり、熊谷の宮大工であり彫刻師であったに飯田和泉の手がけた建築物があります。本殿近くの水屋建物がそれで、八方にらみ龍といわれる見事な龍の彫刻を見ることができます。飯田和泉は三峯のほかにも秩父山車屋台を飾る彫刻も手がけており、秩父地方に多くの足跡を残しているようです。
なお、三峯信仰には江戸末期に二歩でコレラが蔓延した際に、病除けに多くの信仰を集めたとされます。そのために参拝したのではないのですが、今の世に通じるような部分もありそうに感じられました。

■秩父神社漆装飾の補修  のスポット写真

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■江南文化財センター

住所 熊谷市千代329番地
開館時間 午前9時~午後5時
休館日 土曜日・日曜日・祝日・年末年始
お問い合わせ 048-536-5062(熊谷市立江南文化財センター)
ホームページ 江南文化センター「熊谷デジタルミュージアム」へはこちらからどうぞ。

作成日:2020/07/27 取材記者:江南文化財センター