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第6回 青鮫の始まり―月光の青きに染まる― 森村誠一+山下祐樹

金子兜太氏と森村誠一氏 (提供:森村誠一.COM 合資会社ウーニクス)

山下祐樹『青鮫はきているのか―金子兜太俳句の構造と主題―』の序章 巻頭言は熊谷市生まれの作家・森村誠一氏に寄稿いただいた。その内容を掲載し、金子兜太氏と森村氏が懐いていた平和や郷土に対する想いを共有したい。そして、その系譜上にある『青鮫』への導入として、文学や俳句に対する思索の基点に位置付けたいと考えている。

■巻頭言 ―月光の青きに染まる―   森村誠一

戦後俳句を牽引した巨星・金子兜太氏の死は、同じく熊谷に創作の原点を据え続けていた私にとって大きな悲報であった。俳句と小説文学の差こそあれ、互いに共鳴し合いながら、先輩であり父のような金子氏の影響を受けながら、私の創作があったということも否めない。また近年、金子氏と私は対談する機会を得て、戦争体験と平和、現代社会と文学など多様な内容を語り合った。特に平和と戦争に対する認識と、今日の世界における危機ともいえる知性や理性を軽んずる傾向に対しても同じ意識を有していたと思う。
併せて、俳句を通じての郷土文化の再認識に強い関心を寄せている私にとり、金子氏が熊谷に居を置きながら、世界に向けて広く発信されていたことは大きな励みとなっていた。金子氏の死が俳句界のみならず国内外の文化芸術ひいては社会や国家の在り様を考えた時、実に大きな損失であることが分かる。そして今に至り、その死を受け止め、残された我々がいかに引き継いでいくかが重要な課題である。
そのような中、熊谷を拠点にした若き著作者が金子兜太氏の俳句と向き合い邁進し、様々な取り組みを進めていることを知った。同氏は熊谷の歴史や文化財の分野を担当し、また絵画などの作品を通じて芸術文化の発信を続けている。晩年の金子氏との交流を契機に、『熊谷ルネッサンス』を上梓された。今回の新たな著作では、金子氏が詠んだ数々の名俳句群に対する解釈と鑑賞を記し、金子兜太俳句の世界と原郷の理解に向けて手を伸ばしている。俳句の師弟関係とは異なる、歴史風土思想に基づいた金子兜太文学の継承ともいうべき大いなる挑戦が本書の基盤にある。偉大な俳人の文学と足跡を偲ぶとともに、俳句文化の継承を目指す本書の意義は大きい。兜太文学を次なる世代へ。本書はその狼煙を上げている。
最後に、「戦時を生きてきた金子氏の人生は永遠であり、戦火を潜り故國に帰り滿天の星凍りても、月光の青きに染まる」と一節を加える。

■第6回 青鮫の始まり―月光の青きに染まる― 森村誠一+山下祐樹の詳細情報

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作成日:2020/01/22 取材記者:哲学・美術史研究者 山下祐樹