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熊谷市文化遺産研究会 文化庁100年フード申請者
熊谷市立江南文化財センター(学芸員) 山下祐樹
2022年3月3日、文化庁は、地域に根付く食文化を「100年フード」と名付けてPRする新制度で、自治体や団体などから応募申請された食や産品など212件のうち、131件を認定したと発表。100年フードは、江戸時代以前から伝わる「伝統」、明治・大正から続く「近代」、昭和以降に生まれ今後100年の継承を目指す「未来」の3部門がある。
2023年3月3日、文化庁は「100年フード」として、山形芋煮などの70件を認定したと発表した。埼玉関係では「妻沼のいなり寿司(ずし)」、「煮ぼうとう」、「狭山茶」が認定され、食に関する情報発信に取り組む博物館や道の駅などの「食文化ミュージアム」には、入間市博物館と金笛しょうゆパーク(川島町)が認定された。
100年フードの3部門では、江戸時代以前から伝わる「伝統」に45件、明治・大正から続く「近代」に9件、昭和以降に生まれ今後100年継承を目指す「未来」に16件が認定された。今回は3部門で90件の応募があった。
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熊谷市文化遺産研究会(代表:藤間憲一、熊谷商工会議所や江南文化財センターなどを含む地域協議会)は、妻沼のいなり寿司の歴史や概要、伝承技術の現状などの調査研究を進めた上で、「100年フード」への応募を行った。
熊谷市妻沼地域の名物「いなりずし」は、しょうゆと砂糖で煮込んだ油揚げに酢飯を詰めた細長い俵の形で、他の地域より長いという特徴がある。通常、いなりずし3本に巻きずしを加え、一人前として売り出している。
油揚げに裂け目が生じた場合は、かんぴょうを巻いて補強する。包装を解き、その1本が入っていると、不思議にも幸運な「当たり」の感覚が生じる。
江戸時代、稲荷神に対する信仰が広まり、開運招福や豊作などを祈り、多くの稲荷神社が建立された。その神に従うキツネは豆腐の油揚げが好物で、いなりずしやキツネうどんなど、名を冠する食が生まれた。
利根川の水運により、江戸で流行した「いなりずし」が妻沼へ伝わり、河岸で働く人々や、妻沼聖天山の参拝者などに喜びと満腹感を与えた。
現代の妻沼には「いなりずし」の名店が並ぶ。江戸時代中期、国宝「歓喜院聖天堂」建立と同時期に創業した茶屋「毛里川(もりかわ)」が前身の「森川寿司」、明治時代の門前茶屋を発祥とする「小林寿司」、戦後、聖天山四脚門近くに店を構えた「聖天寿し」などが郷土の味を作り続けている。
森川寿司 小林寿司 聖天寿し
シンプルでありながら、きめ細やかな技術を要する妻沼のいなり寿司の製法
細長い「妻沼のいなり寿司」、その特徴を地域資源として次世代に継承する。
家庭料理としての「妻沼のいなり寿司」のレシピの考案など身近な食文化として共有する。
今後、妻沼のいなり寿司の各店の伝統を継承するとともに、江戸の文化を残したいなり寿司の意義や価値を発信し、世代を越えた全国的な認知度を高堰らうための方策を企画・実践する。
「聖天寿し」 埼玉県熊谷市妻沼1515 電話048-588-0162
「名代 小林寿司」 埼玉県熊谷市妻沼1423 電話048-588-0029
「森川寿司」 埼玉県熊谷市妻沼1523 電話048-588-0075
「吟ぎん寿司」 道の駅めぬま 埼玉県熊谷市弥藤吾720番地2 電話048-567-1212
お問い合わせ | 熊谷市立江南文化財センター 電話番号:048-536-5062 |
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作成日:2023/04/12 取材記者:哲学・美術史研究者 山下祐樹