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妻沼聖天山界隈

~2019年迄掲載 歴史 地域

第33回 祈りの形 絵馬その1

文殊寺の絵馬

「絵馬」の存在は、奈良時代からあったといわれ、祈りの形は変化していますが、現在でも絵馬信仰は健在です。東京湯島天神では、「最後は神頼み 合格祈願の絵馬」との見出しで、4万枚の奉納があったと報道されていました。
熊谷の野原の文殊さまも受験生の合格祈願絵馬がたくさん奉納されていました。
絵馬には、合格祈願絵馬の様な小型の絵馬(小絵馬)と、お寺や神社の拝殿などに掲額されている大きな額状のもの大絵馬があります。
妻沼聖天山本殿の聖天堂には、江戸時代から奉納された大絵馬がいくつも掲額されていました。今は仮保管庫に収納され観ることができないのが残念です。
今回は小絵馬と大絵馬から、「祈りの形 絵馬信仰」を2回に分けて取り上げます。

■新春縁起絵馬展

熊谷商工信用組合
石原支店会場

熊谷商工信用組合石原支店で、毎年古い絵馬を蒐集している郷土史家の新島章夫氏の「新春 縁起絵馬展」が開催されています。
今年の干支の羊をはじめ、各地の珍しい絵馬200点が展示されています。
出かけてみてはいかがでしょう。
会期 平成27年1月5日~1月30日
   午前9時~午後4時(土・日・祝は休み)
場所 熊谷商工信用組合石原支店 熊谷市石原3-241
   ℡ 048-522-8200

■熊谷の絵馬

「熊谷の絵馬庶民の祈りと暮らし」
表紙

絵馬の資料を集めようと、埼玉県立熊谷図書館で探したところ貴重な資料に出会いました。
立正大学北埼玉地域研究センター編集の「熊谷の絵馬 庶民の祈りと暮らし」です。平成4年3月に発行されたA4版90ページに及ぶ調査報告書です。
特に、熊谷市内の社寺を訪問し、300点を超す絵馬の調査を実施し、その成果がまとめられています。
写真図版が多く、大変見やすくまとめられています。
あとがきに「『絵馬』には熊谷に生きた庶民の祈りが、暮らしが、端的に表されています。大絵馬はにも、小絵馬にも、時代の民衆の息吹が感じられるのです。この貴重な庶民史の資料を記録しておくことは、今に生きる私達の務めではないでしょうか。」
納得です。ただ残念なのは、この本は市販されているものではないので、目に触れる機会が限られてしまいます。もっと活用されるべき本だと思います。

■上之村神社(熊谷市上之16)の絵馬

上之村神社神門(拝殿)

日の暮れる前の時間帯は、参拝者の姿もなく静かな境内でした。
丁度宮司さんが後片付けをしていたので、写真撮影の許可と絵馬保存の話をしました。
神門兼拝殿には、「熊谷の絵馬」で取り上げられた大絵馬がぎっしり掲額されています。しかし、どの絵馬も色落ちが激しく、描かれている内容が分からなくなっています。
「これは伊勢神宮ですよ。手前がおかげ横丁です。どんどん状態が悪くなり、このままだと、ほとんどなにが描かれていたのかわからなくなる。それが残念だ」という言葉が耳に残りました。
本殿は埼玉県指定文化財 江戸時代前期の建築物です。

■聖天山の絵馬額

平成15年10月の妻沼聖天山本殿保存修理工事着工に伴い、本殿に奉納された大小の絵馬が取り外されました。
一時的保管をするに際して、妻沼町文化財調査研究会(大山雄三会長)は絵馬の緊急調査を実施。
平成17年5月にその調査結果を報告書にとりまとめられています。調査対象絵馬は40点に上り、最も古い物は宝暦12年(17 62)正月であることが、調査によって明らかにされています。
岩崎栄益、荻原春山、江森天淵、奥原晴湖など地元の書画人の大絵馬は芸術性も高く、かつ、郷土史の一級資料となるものです。
再び展覧されることが望まれています。
写真は、妻沼聖天山本殿奉納絵馬調査報告書の山岡鉄舟と奥原晴湖の大絵馬のページ。

作成日:2015/01/17 取材記者:mhennmi