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熊谷人物伝

歴史 地域

第158回 声楽家 小川明子さん(おがわあきこ)

撮影 : 篠原栄治

今回ご紹介するのは、ソリストとして第一線で活躍するアルト歌手 小川明子さんです。

■プロフィール

熊谷市生まれ。熊谷市立西小学校、富士見中学校、県立熊谷女子高等学校を卒業。
東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。東京芸術大学大学院修士課程音楽研究科独唱専攻修了。文化庁オペラ研修所第10期修了。1992年第61回日本音楽コンクール声楽(歌曲)部門第2位入賞。第4回日本声楽コンクール第3位入賞。1993年第4回演奏楽堂日本歌曲コンクール第1位、並びに山田耕筰賞受賞。第10回ニッカ・カルメンシータ新人賞第2位入賞。
高橋啓三氏、渡邊高之助氏、戸田敏子氏、毛利準氏に師事。
1997年11月より文化庁派遣芸術家在外研修員として1年間ウィーンに留学。アデーレ・ハース氏に師事。

■コンサート情報

小川明子さん応援団HPより最新のコンサート情報をご覧いただけます。
・ ANDANTE ~小川明子応援団~

■声楽を始めたきっかけ

「小川明子アルトリサイタル」の様子

小学5年生から始めた合唱がきっかけでした。はじめは母の所属していた混声合唱団で「カルメン」公演のために児童合唱の募集があって、あなたもやるでしょって感じで気軽に合唱の世界に入りました。100人を超える子供の合唱はいろいろな学校の友達もできたし、大人の合唱からお世話係で来てくれていた中学生の人たちとも知り合えて本当に楽しかったんです。そのうち学校のコーラス部にも誘われて、日曜日も夏休みも合唱、合唱…。もちろん中学校も高校も部活動は合唱です。中学生からは大人の合唱に入って歌っていましたから、学校の授業以外の大半は合唱してたんですね。いつ宿題してたんだろ…?
そのころ地元で所属していた大人の合唱団は毎年末ベートヴェンの「第九」を演奏していました。高校1年の冬に毎年バスのソリストをしてくださっていた高橋啓三先生を講師にお呼びして合唱団の発声とドイツ語指導をしていただきました。私はソプラノのメンバーとして参加していましたが、レッスン中に先生が「君、ちょっと歌わないで」とおっしゃるではありませんか!乙女心にショックを覚えたまま練習を終えると、先生が歩み寄り「声楽の勉強をしなさい」と勧めてくださいました。そして第九の演奏会終了後、弟子として先生のお宅にレッスンにうかがうようになったのでした。

■思い出の曲

チャリティ・コンサートの様子

子供の頃から親しんできた歌や体験それぞれに、すべて思い出があると言っても過言ではありません。
例えば小学2年の時、給食時の校内放送でクラスの5、6名で歌ったこと。小さな放送室に足踏みオルガンを運んで授業で習った歌を歌いました。思い返してみれば、これが不特定多数に向けて歌った初体験でしょうか?校内だから特定かな…。
また小学6年では大規模な研究授業で「まっかな秋(小林秀雄作曲)」を二重唱しました。見学の先生方が400人、授業は体育館で行われました。「誰に歌ってもらおうか?」とうい先生の問いに3人の名があがり、一人は男子だったのでアルトを歌ってもらうことにして、ソプラノはジャンケンで決めたのですが私が負けて歌うことに。「ア゛~~ッ」という私の嘆きの叫びに先生方は大笑い!でも後日先生から、教育紙に掲載されたこの授業の所感で「二重唱が心に残った」と書かれているのを見せていただき、ちょっと嬉しかったです。それから三十数年経った2011年の秋に小林秀雄先生の傘寿記念演奏会に出演しました。「先生の曲を人前で歌うのは小学校6年の『まっかな秋』以来です」とお話ししたら、小林先生はニコニコと微笑まれていらっしゃいました。

■歌うことって何?

「『歌う(うたう)』の語源は『訴う(うったう)』」と高校の初めの授業でお話を聞きました。作詞家、作曲家、歌い手、聴き手の共感の連鎖で感動が伝わります。演奏者は作った人たちの思いを汲み取り、聴いてくださる方々にそれを伝えなければなりません。フィルターが曇っていたり、歪んでいてはきちんと伝えることができないのです。できるだけ作品への理解を深め、自分の表現力を高めるとともに、視野を広く持ち、心を耕していきたいと思います。

■これからのこと

レコーディングの様子

小学2年で作文に書いた将来の夢は「おばあちゃんたちが楽しくすごせるお団子屋さんになりたい」でした。生まれたときから祖母と住んでいましたが、よく祖母の友達が来ていて、学校から帰ると「お帰り〜」とおばあちゃんたちが5人ぐらいで迎えてくれ、私も仲間に入ってお菓子を食べたり、お茶を飲んだりしていました。もちろん大好きなお団子も。そんな人付き合いの心地よさが子供の頃から私の中に育まれていたんでしょうね。今はお団子ではないけれど、音楽で、特に合唱でいろいろな年代の仲間たちと楽しく過ごしています。これまで私を育て、支えてくださったすべての方々に感謝するとともに、これからの素敵な出会いに大いに期待しています!

■掲載写真詳細

小川明子
アルトリサイタル
昨年8月に銀座の王子ホールで行われた「小川明子アルトリサイタル」の様子。(主催:が~ちゃんくらぶ/撮影:本橋直幸、北神智子)
福島県立音楽堂
チャリティ・
コンサート
昨年6月に行われた福島県立音楽堂でのチャリティ・コンサートのアンコール「故郷」。左から恩師の高橋啓三先生、高橋先生のご息女でピアニストの渡辺知子さん。合唱は安積フィメールコール(指揮:菅野正美先生)。無料招待された県内外のお客様とともに大合唱となった。
(主催・撮影:おとのきずな実行委員会)
レコーディング 昨年9月に三鷹市芸術文化センター風のホールで行ったのレコーディングの様子。ピアノは山田啓明。(撮影:池田高史)

作成日:2014/04/20 取材記者:みいちゃん