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熊谷市文化財日記アネックス

歴史 地域

在家遺跡と籠原裏古墳群の発掘調査から

■在家遺跡「古代の官衙関連遺跡を発見」

熊谷市のスマートタウン造成事業に伴い、別府地区に所在する在家遺跡の発掘調査(新設道路部分)を平成25年3月~9月まで行いました。工事に先行して試掘調査を実施したところ、遺跡の広がりが確認され、発掘調査を前期・後期に分けて実施し、奈良・平安時代(約1300年前)と鎌倉時代(約800年前)で成果があがりました。今回の調査では、撹乱を受けた箇所がありましたが、官衙(昔の役所)に関連する要素のある遺構・遺物が特徴的です。
前期調査では、幅2m程の東西方向の溝と南北方向の溝を確認し、直角関係にあることから、一連の区画溝の可能性があります。この溝からは、盤、硯、朱墨パレット転用の蓋を含む土師器・須恵器が出土しています。区画内には大型掘立柱建物跡(写真)を複数検出し、主軸方向が概ね一致しています。また、掘立柱建物群内に1棟だけ大型竪穴建物跡が検出された他、大量の焼土と共に遺物が廃棄されていた土坑や、土採りを目的とした土坑などを複数検出しています。区画外からは竪穴建物跡群を検出し、鉄製品やスラグなども出土しています。
後期調査では、竪穴建物跡、建て替えられるものも認められる掘立柱建物跡、土採り土坑などを検出し、主に集落域にあたると思われます。なお、全調査を通して出土した文字資料は、これまでに朱墨「荒」・墨書「丈」・「西」・「林主」などが確認されています。今後、整理調査を進め、内容の再精査を図りたいと考えています。現地説明会を9月14日(土)に開催したところ、200名を超える参加者がありました。普及の面でも成果が得られたと考えています。

■籠原裏古墳群の発掘調査「さらに南へ広がって分布する古墳を発見!」

現在、市内新堀地内JR籠原駅北において8月からの発掘調査が進行中です。調査は、土地区画整理事業に伴う街路築造及び店舗建設箇所において実施しており、籠原裏遺跡及び籠原裏古墳群の範囲内にあたります。
調査により、主として古墳時代後期(7世紀末頃)の古墳4基が確認され、これまで11基の古墳が確認されていた籠原裏古墳群が南へと広がっていることが新たに分りました。街路築造箇所に2基(第12・13号墳)、店舗建設箇所に2基(第14・15号墳)確認され、第12・13号墳は多角形墳になる可能性が高いものであり、周溝まで含めた規模が直径約16mと他の2基に比べると規模が大きなものです。また、いずれの古墳も埋葬施設は胴張型横穴式石室で、わずかな出土遺物と石室の形態から7世紀末~8世紀初頭と考えられます。なお、この時期は、ここから約2㎞北西には当時の幡羅郡家(郡役所)があり、その郡家との関係においても注目される古墳です。(写真は第12号墳検出状況。中央が石室。)

■在家遺跡と籠原裏古墳群の発掘調査からのスポット写真

在家遺跡 全景写真(上が北)

作成日:2014/03/31 取材記者:江南文化財センター