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熊谷市文化財日記

歴史 地域

貝の形をした出土品

穿孔貝巣穴跡軟質泥岩
(せんこうがいすあなあとなんしつでいがん)

熊谷市立江南文化財センターは、「つくる、しる、ふれる」を基本コンセプトにして、市内の文化遺産として伝えられた「文化財」の収集、保管、調査および研究を行うとともに、これらの文化財の活用を図り、未来へ継承していく仕事をしています。
 「熊谷市文化財日記」を通して、市内にある素晴らしい文化遺産を多くの皆様にお伝えすることができたら幸いです。さあ、文化財という新たな旅へ一緒に出かけましょう。

江南文化財センター 熊谷デジタルミュージアムはこちらからどうぞ。

■貝の形をした出土品

熊谷市内野原地区に所在する宮脇遺跡第1号住居跡(古墳時代後期後半)より出土した「穿孔貝巣穴跡軟質泥岩」を紹介します。長さ5.8cm、幅3.8cm程の大きさで、被熱により全体が赤化しています。

この「穿孔貝巣穴跡軟質泥岩」とは、耳慣れない石ですが、海岸の磯浜域に生息する穿孔貝という岩に穴をあけて自分のすみかにする種類の貝の巣穴の跡が残る泥岩のことで、近隣では、房総半島や三浦半島の海岸の泥岩層で確認することができます。東京都八王子市神谷原遺跡、埼玉県川島町富田後遺跡、東松山市反町遺跡などで出土しています。

近年、考古学研究者の坂本和俊氏は、製塩に関する遺物として注目しています(2015:「古墳時代東国の土器を使わない製塩と塩の流通痕跡」:埼玉考古50)。
坂本氏によると、この泥岩が広がる磯浜で海水を溜めるくぼみを掘り、そのくぼみに海水を溜めて乾かしたアマモを何度もしたしては乾燥させ、海水の塩分とアマモの表面の塩分が濃くなった時点で、アマモを薪と一緒に燃やして、灰・塩・熾きの混じったものをつくり、それを塩分が濃くなった海水の溜まっているところに掻きこみ水分を蒸発させて塩分の多く含む灰をつくり、それを握って灰の塊とし流通させた可能性を指摘し、この泥岩は、その灰に混じりこんで流通したもので、製塩土器を使用しない、製塩方法とその流通を示す遺物としています。
被熱し、穴の開いた石が出土した時は、用途が判らず、遺物として取り扱ってよいのか判断に迷いましたが、製塩に関する遺物の可能性があるという指摘により、発掘調査から14年が経ちますが、ようやく納得することができました。

ちなみに、宮脇遺跡の西には「塩」(熊谷市)、南側には「土塩」(滑川町)という地名が残されています。

■江南文化財センター

住所 埼玉県熊谷市千代田329番地
問合せ先 048-536-5062
営業時間・見学時間 9時~17時(入館 16時30分まで)
定休日 土、日、祝日(12月29日~1月3日)
URL 江南文化センター「熊谷デジタルミュージアム」へはこちらからどうぞ。

作成日:2015/08/20 取材記者:yyamasita