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ガラス工房便り

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第17回 源宗寺『平戸の大仏』保存修復について

修復後の名簿奉納式
観世音菩薩坐像(左・高さ約3.9m)、薬師如来坐像(右・高さ約3.5m)

熊谷市にある「平戸の大仏」をご存知でしょうか? 江戸時代初期に建立された、県内最大級・木造寄木造の仏像です。
私が初めて源宗寺を訪れたのは2019年。暗くて狭いお堂に2躯の大きな仏像が佇んでおられました。向かって右が薬師如来坐像、左が観世音菩薩坐像。なんと高さ約3.5mと3.9m。(坐像なのに!)お堂は朽ち、仏様も薄汚れて残念なお姿に。個人的に経年劣化した仏像は美しいと思っていますが、埃をかぶっていては魅力も半減してしまいます。
と、ここまでは前置きです。

老朽化に伴い、保存修理委員会が発足。僭越ながら私も修復のお手伝いをさせていただきました。仏像の修復には「吉備文化財修復所」の牧野隆夫氏。仏像修復のエキスパートです。
修復も佳境を迎えた昨年(2023)6月。牧野先生より「観音様の冠にガラスを入れたいのですが、作れますか?」と連絡をいただきました。突然のことで驚きつつも「是非やらせてください!」と即答。

ミリ単位の指示書をもとに『空洞の球体』は吹きガラスで作り上下を研磨してから中心に穴を開け、『板状のガラス』は電気炉で焼いてからサイズに合わせて周囲を研磨しました。仏像に取り付けられた姿をイメージしながら丁寧に、心を込めて製作させていただきました。


          指示書                      球体穴あけ

          球体完成                     板状丸ガラス

欠損していた装身具は、仏像自身に取り付ける穴が残っていたことや漆の日焼け具合から、飾りが付いていたことは明白。
そこで、江戸時代初期に作られた観世音菩薩の類例を参考にしながら型紙をおこし、復元されました。
まずは銅板を叩いて模様を施し、そこへ金箔を貼り、光沢を抑えるために漆を塗って仕上げた牧野先生のオリジナルです。この冠部分に5個のガラスが取り付けられました。
他にも観世音菩薩の蓮華座や手に持つ蓮の花、胸の飾り、薬師如来の薬壺、白毫、目玉を描くなど。内部の見えない部分も修復がなされたとお聞きしました。


         装飾の型紙                      完成後


         銅板状態                  金箔の色を選ぶ牧野先生


                    完成後の冠

後日、寄付者名簿奉納式にて、修復を終えた仏様と再会。堂々と正面を見据え、美しく蘇ったお姿に感動しました!修復に際し、1000名を超える方々から寄付が集まったそうで、この日は寄付者氏名が書かれた巻物(和紙作家さんの手作り)を薬師如来坐像の胎内へ納める儀式が執り行われました。(頭部が蓋になっていてびっくり!)

      薬師如来の頭を開けている様子              寄付者奉名録




そして昨年(2023)11月4に日行われた「入仏開眼式」をもって、足掛け5年に及ぶ源宗寺・平戸の大仏保存修復事業が終了。江戸時代に建立されて以来、ずっと熊谷を見守り続けた仏様。地元の大切な文化遺産を後世へ残すことができて本当に良かったと思います。私自身、ささやかながら修復に携わることができて、こんなに嬉しいことはありません。(お声がけいただいたこと、奉納名簿にガラス工房を加えていただいたことに感謝申し上げます。)

最後に牧野先生へ「一番大変だったことは何ですか?」と尋ねると「仏像の移動」だったそうです。(古いお堂から仮屋へ移し、修復を終えた仏像を新しいお堂へ戻す作業です。)様々なご苦労と多くの方々の善意で蘇った平戸の大仏。一度お参りしてみてはいかがでしょうか。

■源宗寺ご案内

場 所:源宗寺新本堂(埼玉県熊谷市平戸644)
拝観日:毎月第1日曜日・第3日曜日 10時~12時
拝観料:無料

詳細は源宗寺本堂保存修理委員会サイトをご覧ください。
吉備文化財修復所のサイト

■第17回 源宗寺『平戸の大仏』保存修復についてのスポット写真

指示書
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球体穴あけ
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球体完成
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板状丸ガラス
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銅板状態
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金箔の色を選ぶ牧野先生
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位置合わせ
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薬師如来の頭を開けている様子
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寄付者奉名録
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作成日:2024/02/13 取材記者:各務ガラス工房/各務ひとみ